ピアノの音色で確かめるコンプレッサーの効果

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慣れないうちはその効果が判断できないコンプレッサーの効能をピアノの音を使って確かめてみるよ。

複雑な演奏の中ではピン!と来なかった人も、細かく噛み砕いた今回の検証で確かめてください。

一度、その効き具合を理解できれば、他の音源でもかなり聴き分けられるようになりますよ。

ピアノの音量

ピアノという楽器は、その本体の中に鍵盤の数だけ弦が張ってあって、鍵盤と連動したハンマーが弦を叩くことで音が鳴る。

なので、1つの音(厳密には3本の弦[低音は2本]ですがw)と複数の音を同時に鳴らした時とでは音量が違ってくる。

確かめてみましょう。

まずこんな演奏をさせます。

はじめに”ド”を鳴らして、その次に”ド・ミ・ソ”を鳴らします。

すると、こんな風に聴こえる。
エフェクターを一切使っていませんのでちょっと音が小さいかもしれませんが、手元で適量に調整してください。

波形で見るとこんな感じ。

波形の縦幅が広いほど音は大きい。

当然の結果ではありますが、”ド”を1つだけ弾いた時よりも”ド・ミ・ソ”を一緒に鳴らしたときのほうが音は大きかった。

では、同じ音をひとつ鳴らした時はどうでしょう?

確かめるまでもない。
同じチカラで弾いていればほぼ同じ音量で鳴るはず。

…ってか、同じ音量でなってくれないと困るw

では、同じ1つの音だけれども音程差をつけてみるとどうなる?

こんな感じで2オクターブ離してみました。

聴いて確かめてみましょう。

波形でも確認してみます。

ちょっと判りにくいのでノーマライズ(音量正規化)してみます。
(ここでは波形のカタチを判りやすくするために手っ取り早くノーマライズを行いましたが、この方法は賛否あり、ご自身の作品中で行う際には他の方法と比較して、最適と判断できる方法を取るようにしてください…参考リンク→ 録音レベルが低い音源をノーマライズで解決してはいけない理由|96bit-music)

まぁまぁ、ざっくりと波形の縦幅は同じくらいといっていいでしょうか。(やや高い方の”ド”の方が広い?)

ここで注目していただきたいのは、音量の縦幅の中でも、だんだんと細くなっていくカーブの塩梅です。

低音の”ド”ではなだらかに細くなっていっています。

反面、高い方の”ド”では急に細くなっていく。

これを意識して、今度はノーマライズを施した音を聴いてみてください。
※注意 – 先程よりも大きい音になっています。

ひとつめに聴こえる低い方の”ド”の方は、鳴り始めからしばらくはっきりと音が聴き取れる反面、高い方の”ド”は鳴ってすぐに音が小さくなりはじめますます。

どちらの”ド”の音も、鳴り始めこそ同じくらいの幅(波形の)…音量で鳴り始めているのに、音の伸びにはこんなにも違いがある。
しかし、場合によってはこれでは不具合もある。音を伸ばしたくて鍵盤やサスティーンペダルを抑えっぱなしにしているのに、肝心の音が伸びてくれないのではたまったもんじゃない。そこでコンプレッサーの出番。

単音のピアノにコンプレッサーをかけてみる

ちょっと極端な設定ですが、こんな感じでコンプレッサーをかけてみました。

レシオは8.1:1。

スレッショルドは-9dB。

アタックタイムはこのコンプでは最速の0.1ms。

リリースは120ms。

波形はこんな感じになります。

やはりやりすぎでしたw

まぁまぁ、このままいきましょう。

もともとあった波形の太い部分が押し込まれて細くなっています。

しかし、まだ後半の細り具合にハッキリした違いがあります。

そこで、こんどはゲインを上げてやります。

先程のコンプレッサーの設定にゲインだけ11dBに上げてやりました。

その結果、こんな波形になりました。

音も聴いておきましょうか。

ノーマライズだけ施した音と聴き比べてみましょう。

ノーマライズだけを施した音(下段)と、コンプレッサーで波形の幅の広い部分を抑えつけ全体的に広げたもの(上段)を並べてみます。

鳴り始めの波形の幅はほぼ同じ幅(赤い目印は同じ幅です)ですが、コンプレッサーをかけてやった音の方が幅の太い部分が長くなっています。なので、こちらの音のほうが大きくなったように聴こえます。幅の広い波形が続くのですから大きい音が鳴り続けています。なったように…ではなくて、大きくなっているわけですねw

そして低音域のほうが持ち上げられた音の成分が多い。

高い”ド”の音はもともと途中からかなり小さい音になっていますので、もともとない音はコンプレッサーでも増やしようがない…という事がわかります。

ピアノに限らず、ギターなどでもそうですが、弦の太いほうが振動はしっかりしています。低い音よりも高い音のほうが衰退の速いのは物理的だか力学的だか判りませんが、どうしようもない事実として把握しておく必要がありそうです。

で、低音域は広げずに高音域の波形の幅だけ広げたいのに…という時には、マルチバンドコンプの出番となります。

ここでは割愛いたしますが、マルチバンドコンプというのは、コンプレッサーの効果のかかる範囲をある程度の帯域に限定してかけることが出来るコンプレッサーとなっています。音域によって抑えたり持ち上げたり…と加工したい方向が分かれるときなどに重宝します。

ともあれ、ここではコンプレッサーを使うことで、音の大きい部分を抑えつけ、全体的に波形を膨らませる事ができる…ということをしっかり認識してください。

波形を膨らませる = サスティーンを伸ばすことが出来る…ということです。

シンセサイザーでいうところのADSR(Attack、Decay、Sustain、Releaseの頭文字)を操作するエンベロープ・ジェネレーター的な使い方といってもいいのかな。なので、コンプレッサーで音がわかる…とされるのは、こういう部分も含めて…ということかもしれません。

今回は判りやすさを第一にしていますので、ちょっと大袈裟な設定をしましたが、もっと控えめな設定でこんな使い方をしているコンプレッサーの効果なんて、あらかじめ言われてなきゃ判らへんわい!って話です。コンプレッサーの効果が聴き分けられない…とする理由の一つかもしれませんね。

音量差の粒を揃える

話は冒頭にもどりますが、単音で弾いたピアノの音と、和音で鳴らしたピアノの音では、和音の方が音が大きくなる事を確かめていました。

しかし、演奏の中でフレーズによって音量差が発生するのはつらい場合があります。

ピアノの独奏であれば、単音や和音、高い音や低い音を選ぶことで緩急つけて演奏するわけですが、これをバンドの音に重ねると、単音で弾いたフレーズが聴こえなくて…という事が起こります。そこでコンプレッサーの出番。

冒頭の画像と音源をもう一度置いておきますので確認してください。

これもちょっと判りやすくするためにノーマライズを施します。

音はこの様に変わります。
※音量注意 – ノーマライズで音が大きくなっています。再生する前に音量を調整してください。

波形を見ただけでも判りますが、単音で鳴らした時の方が、コードを鳴らした時よりもやや小さい音となっています。

これをバンド演奏の中に潜り込ませた時、このままだと小さい方に合わせるとコードがやかましくなるし、コードの方に合わせると単音のフレーズが聞き取れなくなります。

そこで、コンプレッサーの出番。

レシオは4:1。

スレッショルドは-20dB。

アタックタイムは15.ms。

リリースタイムは120ms。

ゲインを4dBに上げています。

すると波形はこの様になりました。

音は…といいますとこの通り。

波形で見比べていただいても判っていただけると思いますが、単音の音と和音の音の音量はおよそ同じくらいに揃ったと思います。

これで、他の楽器と重ねても単音のフレーズで埋もれる(or 和音がでかすぎる)事はなくなるでしょう。

応用編

コンプレッサーを使って、単音と和音の音量差を揃えることが出来ることが判ったところで、もうちょっと複雑な例を置いておきます。
前半に和音と単音の混ざった演奏で、後半に和音ばかりのフレーズを用意しました。

これを2回繰り返した音源がコチラです。音量の変化に注意して聴いてみてください。

単音が低い音なので存在感があり、あまり音量差を感じられなかったかもしれませんw
一応、波形でも見てみましょう。

このように、波形の縦幅が実に変化しています。ちなみにこれをダイナミックレンジの広い状態って言います。最大音量と最小音量の差が激しいって意味ですね。

参考リンク
ダイナミックレンジ:Dynamic Rangeとは | 偏ったDTM用語辞典

ピアノの弾き語りなんかだと、このままが良かったりします。

しかし、これをバンドの中でやると、ベースが同じラインを弾いてくれない限り、ピアノの単音フレーズは埋もれてしまいます。
先程のピアノをドラムと重ねてみました。

単音弾きのベースラインがドラムのキックと重なって、聴き分けにくく鳴っていると思います。(ちょっといやがらせなキックではありますw)

そこで、ピアノパートにコンプレッサーをかけてやります。

レシオが8:1。

スレッショルドは-17dB。

アタックタイムは0.1ms。

リリースタイムは120ms。

ゲインは8dB。

その結果こんな感じになりました。

波形はこんな感じです。

すっかり雰囲気が変わってしまいました。しかし、これでベースラインの単音引きとコードの和音が同じくらいの音量になっています。

そして、先程のドラムと重ねてみました。

どうでしょう?コンプレッサーをかける前よりもベースラインが引き立って聴き取りやすくなっていると思います。

ピアノのダイナミックレンジは狭くなってしまいましたが、ドラムのキックに負けないピアノのベースラインを聴かせるためにはやむを得ません。

どうしてもピアノのダイナミックレンジを残して置きたい!ってなら、アレンジから変えていくしかありません。アレンジでピアノのベースラインを邪魔しているキックを減らす…とか、そもそもドラムをやめる…などなど、他の方法を選ぶことになります。

コンプレッサーの効果でダイナミックレンジを犠牲にしてでも聴かせたいのか、ダイナミックレンジを犠牲にしないアレンジをするのか、そこら辺はあなたのセンス…好みで決めることです。

どちらが悪い…ということは全くありません。

なんならコンプはかけずにエレキベースをピアノと同じフレーズにしてやることで、ベースラインの存在感をましてやる方法もあります。エレキベースを入れてもいいのなら、そっちもありです。

ちなみにこんな感じになりました。
ちょっとエレキベースが大きかったかなw

まぁ、コンプをかけるもよし、アレンジで工夫をするもよし。どの手法を選ぶかはその曲の一部としてふさわしいかどうか?が全てです。臨機応変に使い分ければいいと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?

コンプレッサーの効果は聴き分けられるようになりましたか?

コンプレッサーの役割としては今回用意できた使い方だけではなく、もっと極端に音色を変化させるような使い方もありますし、実在するコンプレッサーのシュミレートしたものであれば、圧縮の機能はあまり使わずに、通すことで得られる倍音の変化を期待したり…と、様々な使い方があります。

コンプレッサーの機能を応用したエフェクターでゲートやエキスパンダー、リミッターなど枝分かれしたエフェクターもそもそもの基本はコンプレッサーにあるわけです。

音を圧縮する役目を担っているのでコンプレッサーという名前で呼ばれている。

そのなんだか判りにくいコンプレッサーの効果が、今回の聴き比べで掴めたのだとしたら、これほど嬉しいことはありません。

ココが判らん!とか、ここ間違ってるよ!なんてご指摘などありましたら、ツイッターの方で投げかけていただけると助かります。

でわでわ。

使用した音源

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