Waves SSL G-Master Buss Compressor を使用する際に発生する倍音を視覚的にチェックしてみる。
Wavesバンドルのほぼ全部入りと言われるMERCURYですら、含まれていないSSL 4000シリーズコンソールに搭載されているバスコンプをモデリングした「SSL G-Master Buss Compressor」がどういった音色変化をもたらすのか?
スペクトラムアナライザを使って見てみます。
経緯
ツイッターで優しくしてくださっているYoshiyuki Endo(@yoshiyuki_endo)さんとのやり取りの中で、そもそもSSLコンソールというのは、いかにクリアな音質を求めるか…という前提で開発されてたらしいですよ!という情報をいただいていました。
SSLコンソールといえば、Propellerhead社のReasonに含まれるミキサー部がSSL9000シリーズをモデリングしているのなんの…という情報は知っていたものの、そのモデリング具合について、このやり取りの中で詳しく教えていただいておりました。
そして、その話の流れで、Yoshiyuki Endo(@yoshiyuki_endo)さんがお手元のReasonで、音色チェックをしてくださったのです。
Reason SSLの件ですが、サイン波で調べた所、チャンネルコンプには多少倍音が付くのでやはりなんらかのアナログ的な仕掛けはあるのかもです。Peak Onの方が多いです。マスターバスコンプは意外にも?倍音はほぼ付かないようです。レトロ変換機テープも調べてみました。
— Yoshiyuki Endo (@yoshiyuki_endo) 2018年8月11日
で、その結果、SSLバスコンプは見事に倍音の付加が見受けられなかった…という事でしたので、それならばこちらでもWAVES社から出ているSSLのバスコンプをチェックしてみよう!となったわけです。
果たしてどうなりますでしょうw
チェック環境
こちらでの検証にはホストDAWとしてStudioOne3.5を使用。
StudioOneに付いてくるスペクトラムアナライザと、WAVES社の eMo Generatorで1kHzのサイン波を-20dB出力してどの様な変化を見せてくれるか、確かめてみました。
SSLバスコンプの音色変化
それでは、まずSSLバスコンプだけを挿した状態のアナライザ画像を。
はい、なんにも変化はありません。
「そんなん、当たり前やん!」と思われそうな画像をどうしてわざわざ置いたのか?
次に、ANALOG機能を有効にしたものをご覧ください。
どうでしょw全体域にざわつきが見られます。音量としては-96dBを大きく下回っていますので、このままであれば何も聴こえない程度のノイズかと思われます。しかし、この無音状態でのざわつきが、何かしらの音が鳴った時にどう影響するのか?少なからずの影響が見られるから、わざわざこのアナログノイズをモデリングしているのかと。
ま、今回の検証ではちょっと邪魔になりますので、このアナログ機能はここでの確認にとどめておきます。
次に、バスコンプを
続いて、eMo Generatorで、1kHzのサイン波を出してみます。
まずは、バスコンプをバイパスした状態から。
続いてバスコンプを有効にします。
すると、ほのかに2倍音が発生しています。
2倍音は音程的に言うと1オクターブ上の音。オクターブ違いの音程ですので響き的に馴染みもよく、仮に聴こえたとしてもあまり大きな影響は無いでしょう。敏感な方であれば気付けるか!?(ワシは無理やなw)
バスコンプを有効化することで、2倍音が付加されることは確認できました。あとは、1kHzのサイン波そのもののグラフに変化はないのか?確かめておきましょう。
これらの画像は別窓で拡大表示されます。両方の画像を別窓で開いておいて、ブラウザのタブを交互に切り替え比較してみて下さい。
続いて、ThresholdとMAKE UPを普通はここまでやらんやろwってくらいに上げて(Thresholdは下げて)みます。
Thresholdを-9に、MAKE UPを10まで上げてみると、様々な倍音成分が付加されました。
また、100Hz辺りにも、なにやら付加された音があるようです。
(画像がクリックで別窓拡大できますので設定も併せて付加された倍音をお確かめ下さい)
この2枚の画像も、先に両方別窓表示にしておいて、タブを交互にクリックして双方の違いを比べてみて下さい。ここで見ていただきたいのは、1kHzのグラフ。
Thresholdを低く設定したせいで1kHzのグラフが抑え込まれています。(レシオは1:4)
グラフはやや小さくなっているのですが、バスコンプオフのグラフとよく見比べてみると、バスコンプ有効の方がやや毛羽立ったようなグラフになっています。この変化が何を意味するのか?私には解りませんw
ただ、間違いないのはコンプによって抑え込まえる際には、倍音の付加に加え、抑え込まれた音そのものにも何かしらの変化が加えられている…ということ。
こういった作用が、「SSLのバスコンプを使うとまとまりが良くなる!」という評価につながる作用を起こしているのかもしれません。
まとめ
SSL G-Master Buss Compressor のコンプレッション作用において、音色の変化があるのは間違いなさそうです。
なさそう…としたのは、付加される倍音の大きさがそれほど大きくなかったことが気になるから。
耳で聴いて、明らかに歪んでますねwとはならない程度の変化に留まっている様子。
ただ、巷でよく見かける評価に「まとまりがいい!」という文言が多いので、このわずかな変化もその理由のひとつに入るのかもしれません。
SSLコンソールの卓全体の音色変化をモデリングしているプラグインが別にある(NLS Non-Linear Summer)ことに気付いた時、やはりこのバスコンプやチャンネルストリップ、EQといったプラグインでは大きな音色変化は得られないのか?なんて早合点しておりましたが、微かにではありますが、倍音の付加、コンプレッションの際に起こるグラフの変化で、少なからず(聴き取れない範囲かもしれないが)音色の変化が加えられているようです。
また、聴き取れるのかわからない程度に加えることの出来るアナログノイズも、意識的にはノイズの有無を判断出来ないとしても、無意識にそのノイズを感じ取って、音の善し悪しを判断する要素として、気づかずに条件のひとつに加えているのかもしれません。
人体の謎…のひとつですね(笑)